前回までのあらすじ
彼は今日もベルを鳴らす。
一日に何度も、何日も、同じ家の、同じボタンを押し続ける。
だが応答はない。インターホンは沈黙し続け、記憶だけが増えていく。
これは恋なのか、それとも呪いなのか。
19時指定、それは“再配達ラブコール”
「午前指定でいなかった人」が、再配達で「19-21時」を希望してくることは多い。
よくある。というか、かなりある。もはや常連の風格すら漂う。
言い方をすごく悪く言えば、
「またこいつか、どうせ不在だろ」
って思ってしまう自分がいる。
そして19:30に行くと——
不在。
「19時に来て」と言ったのは、誰? 君だよね?ってなる。
翌日もまた「19-21時」希望。来る。またいない。
次の日も来る。またいない。
気づけば俺、あなたの家のインターホンと3日連続で会話してる。
あなたがいないのに。
それは恋か、執念か。
こっちは「今日は早く帰れるかも」って淡い期待を抱いてる。
それが18:50に崩れ去る。再配達の電話が鳴る。19時希望。お前か。お前なのか。
せめて「19時台は確実にいるぞ!」って意志を見せてほしい。
なのに19:30に着いたら、朝と同じ風景。
時々洗濯物が変わってるのがまた切ない。
一回は帰ってる。なのにいない。
これはずるい。俺にアタックの意思を植えつけるな。
朝会っただろ犬、俺だよ、俺。
吠えるな。俺が吠えたいわ。
これはもはや、恋文
何度その家の前に立ったか。何度ピンポンと鳴らしたか。
もうね、これは配達じゃなくて告白なんだわ。
何度あなたに想いを届けようとしたか。
でも、あなたはいない。これは、片思いだ。
これで荷物がバラだったら、毎日花束を持ってくるストーカーにしか見えない。
それでも、明日もまた
荷物は手元に残る。今日も届けられなかった。
次の日も、また同じ時間帯にその家を訪れる。
俺は今日も、インターホンを押す。
あなたがいないとわかっていても。
意見・コメント・通報は、あなたが本当に家にいる時にお願いします。
インターホンが応えてくれそうな気がした時、それが運命の時です。