前回までのあらすじ
彼は腹を下していた。
だが時間指定は待ってくれない。
配達のプロとして、腹の闘いに勝利したその矢先——
今度は、地面から敗北がやってきた。
踏んだ瞬間に確信する、それは「人のやつ」
「これは犬じゃない、猫でもない」
そう確信できるのは、こっちが人間だからだ。
生まれてからずっと人間。糞に関しては、完全にプロ。
今日も朝から猫のハクがトイレの外にぶっ放したブツを掃除していた。
なんであんな飛ぶのか。飛距離競い合ってる??
街中でもごくたまに落ちているアレ。「これは動物のじゃないな」ってやつ。
配達員は、そういう“違和感”を感じ取る能力が高まっていく。(?)
人の庭で地雷を踏む、という事故
さっき歩いたのは、お客様の家の敷地内だけ。
つまり、人んちの庭で踏んだことになる。
配達車に戻る。ドアを閉めた瞬間に違和感。
空気が変わる。明確に漂う「不穏な臭い」。
「これは、何かを踏んだな……」
その直感は的中する。
靴の裏を見る。あ、はい。
完全にアウト。100点満点のアウト。

緊急対応:靴底クレンジング大作戦
時間はない。次の再配達まで、残り15分。
配達員に与えられた時間はない。ここからは刹那の動き。
→靴を脱ぐ
→飲みかけのコーヒーを靴裏にぶっかける
→アスファルトに擦りつける
→そこらの泥の上でステップを踏む
→側溝の水に滑り込む
→踊る
踊る。踊る。不審者が一丁あがり。
この一連のムーブ、誰にも見られたくないランキング不動の1位。
配達員は、時に人生の地雷も踏む
誰が悪い?誰も悪くない?いや、庭にそれを置くのはやめてくれ。
人糞を踏みし者に、明日などない。
残るのは、靴底にまとわりつく違和感と、
永遠に消えないメンタルのシミ。
あと、言っておく。
ちゃんと営業所に戻って水で洗ったから!!
誰よりも潔癖な心で次の家に向かったから!!
意見・コメント・通報は、靴を洗ってからお願いします。
あと、庭にトイレ置かないでください。マジでやめてください。