前回までのあらすじ〜
猫に土下座をさせられていた山田は、腰を低くしたまま水を替え、砂を替え、ご褒美のチュールを献上していた。
猫は存在するだけでご褒美を貰えるのだ。当たり前だ。猫は尊いのだから。
神の使いなのさ、障子を破られても喜ばなくてはならない。
だが聞いて欲しい。
障子と約束は破っちゃダメ!絶対!!!
ゴミ屋敷って、ほんとにあるの?
あるんです。
あります。断言します。テレビの中の話じゃありません。
思わず配達の途中で「え?」って言っちゃうくらい、本気で存在します。
みなさん、ちょっと気になってたんじゃないでしょうか?
「都市伝説みたいなゴミ屋敷、ほんとにあるの?」って。
あるんです。しかも、わりと普通に。
第一宝物庫、開門。
僕が初めてその存在に触れたのは、配達の研修中でした。
まだ挙動不審のまま、震える手でインターホンを押したあの日。
玄関のチャイムを押した瞬間から始まるのは、住人ガチャ。
何が出るか分からない。
マイク付きなら声のトーンと性別から身構えの準備をする。
優しそうな声ならこちらも物腰柔らかく。
不機嫌そうならちょっと胸を張って、押し切る雰囲気で。
今では慣れて、どんなキャラにもなれる。
取り調べだってできる。「怪しい顔してはりますねぇ?」
—
で、その日。
反応はない。でも鍵の音がして、ドアが開いた。
開いた瞬間、見えたんです。
積まれた“宝”たちが。

トトロのハンコとまっくろくろすけ
床に敷き詰められた無数の宝物。
その中から、お客さんは器用に掻き分けて、
トトロのキャラ入りハンコを取り出してきた。
こっちはまっくろくろすけを1匹潰したようなゾワゾワ感と戦いながら、笑顔で対応します。
プロですから。
出会ってきた、数々の宝物庫
- ベランダまで宝で埋まっているアパート
- 玄関ドアが変形するレベルで詰め込まれてる部屋
- 廊下の黒い床……と思ったら髪と埃の塊
- チラシが散乱してるだけなのに“アグレッシブオシャレ床”に見える奇跡
みんな違って、みんなヤバい。
でもね、不思議なんですよ。
中の人、9割が良い人なんです。
めっちゃ愛想いい。対応も丁寧。
たぶん、心に余裕がなくて物が捨てられないのかな。
物をためることで、何かを守ってるのかもしれません。
でも言わせて!それ、ゴミです!!!
だからこそ、伝えたい。
その宝、ゴミです。
捨てましょう。お願いだから捨ててください!!!!
ドアが変形してます!!!マジで!!!
火事のとき、マジで出られませんからね!!!!
デデドン!!!!(宝物庫 崩壊音)
【今日のひとこと】
配達員は“物”ではなく、“人”に届けてます。
受け取るのは、あなたです。
あなたが、部屋を開けるのです。
意見・コメント・通報は、玄関のチラシをどけてからお願いします。
次回予告:「便意vs時間指定 〜トイレを求めて三千歩〜」
お楽しみに!