“時間指定”という人工的な秩序に、“便意”という原始のカオスが牙を剥く時、そこに生まれるのは——
哀しき選択と、トイレの神への祈りだ。
前回までのあらすじ〜
宝物というゴミを掻き分けてくる住人に新たな宝物を捧げ、引き攣った笑顔で迎える山田。
そんな中——彼の腹が鳴った。
それは空腹ではない。戦の号砲である。
便意。それは選べない訪問者。
配達員という仕事に、予定外はつきもの。
道路の渋滞、インターホンの無反応、そして……突如として降りかかる便意の襲撃。
「ヤバいな」と思ったときにはもう遅い。
アプリに表示された時間指定のピンが、ぐにゃりと歪む。
目の前の現実が、茶色く染まって見える。幻覚であってほしい。
だが、ここで“決断”が迫られる。
・便意を優先し、コンビニへGO → 時間指定を落とす
・時間指定を優先し、己の肛門を信じる → 地獄の可能性
どちらも、失うものが大きい。
この便意、どのタイミングで撃ち落とすか
最悪なのは、トイレのない住宅街で、しかも時間指定が詰まってる時。
一軒家が並ぶエリアに、俺は一人。
近くにコンビニは……ない。ドラッグストアも……ない。
トイレも、希望も、ない。
「……終わったな」と思う。
地面が揺れる。いや、腹だ。
配達先の玄関先で一瞬しゃがむフリして耐える。
すれ違った人に「お疲れ様です」って声かけられても、返せない。今はそれどころじゃない。
耐えた先にあるもの
便意をなんとか鎮めて時間指定に向かう。
無事に届ける。サインをもらう。
その瞬間、内なる声が聞こえる。
「よく……耐えたな……」
帰り道、見つけた公園のトイレに駆け込む。
スッキリする。空を見上げる。
でも、アプリを見ると時間指定の一部はスキップ済み。
急いできましたと慌てた顔とスッキリした心。
便意の余裕は心の余裕。
腹痛はナニモノにも勝るのだ。
お願い…勝らないで…まさるくん…
便意 is BENNI
便意、それは「今この瞬間をどう生きるか」を問いかけてくる存在。
配達員、それは「時間と腹の板挟みで生きる職業」。
本当に辛い。便意 is BENNI。
便意モードは思考がグルグル回る。
漏らすか…それ以外か…
コメント 気になる事等なんでもどうぞ!